2015年1月23日のNPO法人グローバルリーダーシップアソシエーション(GLEA)のワークショップでは、受講者は蓮行先生の演出により泡沫裁判所という演劇を演じた。
簡単な内容は上にも掲げた2012年のこのブログに紹介したが、今回は次のようなバイパス効果の図を紹介したい。
泡沫裁判所を大学の授業で取り上げるとすれば、直接の効果として「司法を理解することができる」とか「ディベートのスキルを身につけることができる」という目標を掲げないと、大学の評価に響く。しかし、司法のお勉強など嫌いやとか、ディベートって難しそうと思っている学生には、受講する意欲をなくさせる効果しかない。ここで直接の目標に至るルートではなく、演劇というバイパスを通って同じ目標を達成しようというのがバイパス効果である。
このときに、「演劇をしよう」では普通の学生には何のことか分からないので、学生のニーズに合わせて、たとえば「演劇をしながら楽しくコミュニケーションを学ぼう」というような少し曖昧で無責任な目的を掲げておくのがよいだろう。目標としては、「演劇を通じて社会で生きる力を身につけることができる」くらいがよいかもしれない。
もちろん、泡沫裁判所という劇を演じることによって、司法の考え方や裁判所、検察、弁護人や被告人の気持ちを理解することができたり、裁判員制度の大変さを感じ取ることができるなど、人それぞれたくさんのことをくみ取ることが可能である。教員の力次第では、学生は、親切な単一目的型教材では得られない学習体験をすることができる。
ちなみに、交渉の教材についても、どのような教材が望ましいかについて次のような一見対立する考え方があることを紹介しておこう。
・単一目的型教材「教材は、学習ポイントを絞り学習段階に応じた種類のものを体系的に配列すべきである。」
・くみ取り型教材(いわゆるケースメソッドに近い)「交渉教材には、色々な学習ポイントを含んだ現実に近い教材が含まれるべきで、教師が対話型授業を通じ、学習者の自発的な「気づき」をうながすことができるものとすべきである。」
出典:交渉教育研究会制作『実演交渉DVD 交渉は楽しい! ●解説テキスト』(商事法務、2011年)。