2012年10月27日土曜日

シブミとサトリ

日本人と日本文化に影響を受けたと言われる伝説の暗殺者!ニコライヘル。トレバニアンのシブミは1979年に出版されていたのに、去年まで知らなかった。続編のサトリがドン・ウィンスローによって去年出版されたが、最近日本語版が出たらしい。続編は少し下品な感じがした。
https://twitter.com/nomurakn/status/261847605502435329

どこが下品な感じがしたのかは忘れたが、Don WinslowはTrevanianよりless sophisticated だと思ったのは、Satori(2011)にこんな一文があったからだ。

Collective responsibility was an Asian tradition. Chapter 160.

つぎは、Trevanian (pseudonym for Rodney Whitaker, 1931-2005)のShibumi (1979)からの引用。米国のエージェントが、スガモ刑務所にいるニコライヘルに仕事の依頼をしようとして報酬をオファーする場面である。

'You're capable of doing it. We'll pay you with your freedom.'
'I have my freedom. You mean you'll pay me with my liberty.' Part Two Sabaki, Japan.

刑務所にいるのにfreedomはあるというのである。ではlibertyというのはなんなんだろう。

「いいだろう。」
「どんなlibertyをもらえるのかな」
「なんだって」
'Lberty to do what?'
「君の言ってることがよく理解できないな。自由(liberty)だよ、解放(freedom)ということだ。」
「なるほど。国籍と相当額の金銭も用意してくれるということだな。」
「いやいやそうではなくて。あのね、わたしは君を自由にしてやろうと言う権限は与えられているが、金銭や国籍のことは誰も何にも言ってない。」

刑務所から自由にしてもらっても、したいことを自由にできないのならいやだというのである。

Don Winslowによれば、トレバニアンのシブミはスリラーの概念を変えたといわれている。

2012年10月18日木曜日

若手のホープ橋本佳奈さんによるファシリテーターの心掛け


若手のホープ橋本佳奈さんが、後輩達のために「ファシリテーターの心掛け」を綴ってくれました。ファシリテーションの舞台は、大阪大学で20122学期に開講された「アジアにおける授業戦略とリーダーシップ」です。橋本さんは、初回から2回目までファシリテーターをつとめてくれました。授業は240分から410分までの90分で、企業のトップをゲストスピーカーにお招きして40分ご講話をお願いし、そのあとで学生達がスピーカーに質問したりディスカッションしたりしています。この授業は、学生によるグローバルリーダーシップ運営委員会が運営しています。

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ファシリテーターの心掛け

By 橋本佳奈(はしもとかな)
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1)質問コーナーのときはフロア全体をみる
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前に立てばわかりますが、つい前方で挙手している人ばかりに目がいってしまいます。
これでは不公平ですし、前方だけが盛り上がってしまうのも残念です。
なので、私は真ん中や後方で手を挙げている人がいれば必ず指名しようと心掛けています。
また、傾向として男性が発言しがちですので、女性が挙手していれば当てるようにしています。

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2)時間を気にする
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スピーカーのサービス精神が旺盛なあまり、プレゼンが長引きそうな場合は腕時計を見るなどして時間を気にしている様子をスピーカーにアピールすることもあります。
また、いつも16:00前後くらいに質問コーナーを終了することを目標にしています。
15:50
を過ぎたあたりから「そろそろ最後の一問です」と予告、スピーカーの話す量によりますが、15:56を過ぎていれば、潔く切り上げるようにしています。

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3)自分で質問を考えておく
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1回、第2回は大丈夫でしたが、質問コーナーで質問が出ないことは多々あります。
そのときはフロアをあおります。「プレゼンでは伺えなかった学生時代のお話や、最近の関心事についてでもお答えいただけると思いますよー」などなど。
沈黙がないよう15秒くらいは我慢強くあおりますが、それでも出ないときは、「ではでしゃばってしまいますが私からひとつ」なんて、ファシリテータから質問できるよう、プレゼン中に質問をいくつか用意するようにしています。

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4)誰よりも良いオーディエンスになる!
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スピーチの後、なんとなく拍手するのかしないのかよくわからない雰囲気になることってありますよね?
そんなことにならぬよう、また、ゲストへの感謝をちょっとでも多く表したいので、私はファシリテータのときは率先して拍手しようと心掛けています。
ファシリテータが拍手をすれば、もしくはあおれば、みんな絶対拍手します。
また締めの時や、質問コーナーで沈黙が生じたときなんかに何かしら気の利いた一言が言えるようプレゼンでのキーワードや心に残った言葉は書き留めるようにしています。

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以上

2012年10月13日土曜日

韓国からみた中華と日本と第三者(かどうかに注意が必要)の意見の交錯

韓国紙に注目。尖閣をみても中華民族主義は手が付けられないが日本の極右も民族主義をあおる。イアンブレーマーは日本は米国の必要不可欠の同盟国になるべきだが韓国はなれない、地政学的な影響力が日本より小さいからという。なのに韓国の大統領選候補は外交戦略を語らない。日経20121013

韓国 毎日経済新聞(20121011)、日経20121013より
「中国はイデオロギーで団結を保つのが難しくなり、民族主義で統合しようとしている。日本の尖閣諸島支配を妨げようとするさまを見ても、「中華民族主義」は手が付けられない。日本の極右勢力も民族主義をあおっている。」「リスク管理の専門家で米ユーラシア・グループのイアン・ブレマー氏は9月初旬、英フィナンシャル・タイムズ紙への寄稿で「日本は米国の必要不可欠な同盟国になるべきだ」と強調した[1]。韓国は(そのような存在に)なれないという。地政学的な影響力が、日本よりはるかに小さいからだそうだ。」「中国で民族主義が噴き出し、さらに日本が右傾化すれば、アジアが団結する道は閉ざされる。経済を統合して戦火を防ぐという欧州モデルも、今や夢のような話だ。我々は米中日のいずれからも遠い、孤独な存在になるかもしれない。それなのに韓国の大統領選候補たちは、外交戦略に一言も触れようとしない。」

日本が米国の必要不可欠な同盟国になるべきだというイアン・ブレマー氏の意見の該当部分は次の通り[2]
“The US has performed a “pivot” to the continent but it also needs a new special relationship for the new world order. Japan should be that indispensable ally.”
“No other nation comes close. It is in vogue to talk about South Korea as the new Japan, with Hyundai supplanting Toyota and Samsung surpassing Sony. But Seoul can’t be Washington’s indispensable ally in Asia. South Korea is much more exposed to China and, despite its commercial success, has only a fraction of Tokyo’s geopolitical heft.”
“Ten years ago, the US asked toomuch and Tokyo delivered too little; now, with a rising China as the impetus, it is time to seal the special relationship that both the US and Japan need.”

ブレマー氏に反論して「日本は未だ信頼できる同盟国にはなれない」というレーマン氏の投書がある。Dr Jean-Pierre Lehmann, “Japan’s not ready to be a reliable ally.”[3] レーマン氏はビクター・ファン(Victor K. Fung)氏が代表をつとめるファン・グローバルインスティテュートの上級研究員でもある[4]。ビクター・ファン氏は香港に拠点を置く持株会社[5]が支配するファン・グループの代表者でもある[6]




[1] Ian Bremmer and David Gordon,Japan must be the new indispensable ally for the US in Asia”, Opinion, http://www.ft.com at September 9, 2012 8:48 pm.
[2] See ibid.
[3] Letters, http://www.ft.com at September 12, 2012 3:45 am.
[5] 香港に拠点を置く非上場の馮氏控股(Fung Holdings) (1937) Limited は、Fungグループ企業の大株主である。http://www.funggroup.com/jp/businesses/.

2012年10月3日水曜日

GETTING TO YES 2011年版について


2012921()に開催された実践法教育研究会の報告原稿です[1] コミュニケーションとネゴシエーションの関係については大分研究が進んでいるようです。注に記載した論文を発見しました。余裕ができたら、よいコミュニケーションが交渉力アップにつながるのか、ミディエーションやファシリテーションでも用いられるフレーミング手法などについて、書き足したいと思います。

Getting to Yes(ハーバード流交渉術)第3版、2011 [頁数]、第2,1991{頁数}
Roger Fisher,William L. Ury and Bruce Patton, Getting to Yes: Negotiating Agreement Without Giving In (Penguin, 3d., ed., 2011).Paperback ISBN 9780143118756 | 240 pages | 03 May 2011 | Penguin | 8.26 x 5.23in.

1. 交渉革命(第3版の前書き)
・個人や組織の関係が力による命令から交渉に変化したことを交渉革命(negotiation revolution)と呼んでいる。

・命令から交渉への交渉革命で3つの変化があった。交渉は労使関係、契約締結、外交などの特殊な活動から日常的なものとなった。一昔前は「交渉」という言葉には対立的な意味合いも込められていたが、現在では勝ち負けでない賢い交渉方法があることが認められた。法、経営、公共政策大学院では交渉がコア能力として広く教えられるようになった。

2.感情に関する5つの利害-日本語でどう説明するか
人と問題を切り離せ(第2章)

Pay attention to "core concerns." [p.32]
Autonomy(自律:干渉されたくない): “the desire to make your own choices and control your own fate”
Appreciation(他人から認められたい): “the desire to be recognized and valued”
Affiliation(どこかのグループに帰属したい、受け入れてもらいたい): “the desire to belong as an accepted member of some peer group”
Role(やりがいのある役割を果たしたい): “the desire to have a meaningful purpose”
Status(自分の地位を尊重されたい): “the desire to feel fairly seen and acknowledged.”


3.交渉力を交渉の7要素(seven elements of negotiation)として整理

10番目の質問 相手の方が力が強い場合はどうすればよいか。交渉力をあげるためには?[p.181]{p.177}

・交渉力のもとになるたくさんの要素がある。[p.183]{p.179}
5つ:BATNA+人(the relationship)、利害、選択肢、客観的基準=1+4(第1版、1981
6つめ: コミットメントの力(第2版)
7つめ: 効果的なコミュニケーションの力(プロセス管理を含む 後述5)(第3版)。

・交渉者の間に良好な機能的関係を作り上げることは力になる[p.183]{p.179}
・第2版の記述{p.180}に、中東和平枠組みに関する国連決議242号をめぐる英国の外交官とソ連の外交官の例を加え[p.184]、最後に正直さとフェアネスの評判は交渉者として最重要の資産であると結論づけている。[p.185]

4.効果的なコミュニケーションには力がある([p.185]見出しを新設)交渉プロセスの管理として整理
10番目の質問の続き。

○交渉プロセスを巧みに管理すること-試合の流れを変える動きをする-は達成できる結果の質を左右する。
・力強いメッセージを送ることと傾聴サインを送ること。[pp.185-186]{pp.180-181}記述は同じだが、これらを交渉プロセスの管理として整理。
・立場重視型から原則立脚型へとフレームを変えること。利害、選択肢、基準およびBATNAに基づいたリフレーミング[pp.186-187][2]

以上の他にも、立場ではなく利害に焦点をあてよ(第3章)で、「なぜなのか」に2つのまったく異なった意味があるThe question "Why?" has two quite different meanings.[pp.54-55]という見出しが新設されている。第1に何が起こったか、第2に何が起こって欲しいかである。何が起こったかではなく、何が起こって欲しいかを語れといっている。

以上


[1] 2012921()1830-2030 、上智大学(四谷キャンパス) 2号館13階、2-1315(大会議室)
[2] Linda Putnam & Michael E. Roloff, Communication and negotiation, (Sage, 1992). Sanda Kaufman & Michael Elliott, “Frames, Framing and Reframing”(September 2003) http://www.beyondintractability.org/bi-essay/framing