ミキハウスの木村社長のお話に、調停者(交渉)とメンター(リーダー)の役割に関して重要なヒントをみつけた。対話メモはまた紹介するが、要約すれば:人に聞かなくても相手方から自分をみたら何をしてほしいかを考えればよい。師匠に頼るよりオリジナリティ。相手の立場に立って考えると発見できる。
・フレッシュキャリアAさん:自分でか人に聞くか。
・木村:逆の立場。相手方から自分をみたら何をしてほしいか。健康であるなら、向こう側からみたらわかる。
・上斗米先生(東京会場):実行するためには健康。
・ベネフィットワンKさん:納期を守る。管理費、維持費、在庫管理は。
木村:Kさん、自分で覚えとかな。500人の電話番号を覚えた。必要だったから。
・Yさん(名前が聞き取れず。所属を言った後がモジャモジャ)
・木村:言葉通じなくても欲しいものは欲しい。ブランドを作りたかった。行動せえへんところに問題がある。内職のおばちゃんやから縫うてくれた。
ギャップ社員:頼る師匠、指針は。
・木村:尊敬する人はいる。オリジナリティ。相手の立場に立って考える。子供服にこだわっていない。出版。ニーズに合った本を作ればすごい。
交渉する人もリーダーシップを行使する人も、自分では気がつかない弱点があります。交渉における調停者(第三者)やリーダーシップにおけるパートナー(第三者ではない)は、自分では気がつかない弱点を補ってくれます。しかし、相手の立場で考え、相手の目に自分がどう見るかを想像してみることによって、調停者やパートナーの役割を代替することができる場合があるのです。
交渉に調停者を入れる利点についてはいろいろな見解がありますが、わたしが最も重要だと思うのはつぎです。ハーバード型交渉法(原則立脚型、利害立脚型、統合型、価値創造型、問題解決型、ウィンウィン型とも呼ばれます)では、自分の利害と相手の利害を分析して最適の組み合わせを見つけますが、調停者はこの分析と組み合わせ作業を促し(facilitate introspection)、相手方と共有する(facilitate
communication)役割を果たします[2]。
リーダーにとってパートナーが必要なのは、次のような理由からです。「だれしも他人の意見が必要となる気づかない点(ブラインドスポット)がある。だれしも他人におさえてもらわなければならない強過ぎる思い(パッション)がある。だれでもバルコニーに上って眺めてみる余裕を失うことがある。プレシャーが強くかかってくるときはなおさらだ。リーダーシップを行使する人はだれでも、自分自身と自分の役割を区別し、攻撃を誘発するような潜在的争点を洗い出すために助けが必要だ。[3]」
第三者である調停者でも自分の「味方」であるパートナーでも、重要なのは自分が気がつかないことに気づかせてくれる点です。通常あまり強調されてはいませんが、気が滅入るほど難しい問題に取り組んでいる人にとって、自分の知覚、認知のバイアスを修正してくれる人がいると、その問題の隠れた原因や生じうる結果に気づくことができます。いわば世の中や世界の見え方を変えてくれる人といえるでしょう。
[2] Russell Korobkin, Legal
Negotiation Theory and Strategy (Aspen Publishers; 2 ed., 2009), pp.331-332.
[3] Ronald A. Heifetz, Leadership Without Easy Answers (Belknap
Press of Harvard U. Press, 1996), p.268.
[4] 「今、南部さんから、相手が何を求めているのかを想像してみて、それで自分の音楽を組み立ててみるというお話があったと思うんです。これは先ほど,私が徒弟として学んだその弁護士さんのありよう、人と向き合って話し合いをしていろいろな間窟解決をしていくという、その姿と非常に共通していると思うんです。」「人を動かす一交渉と音楽(上)」JCAジャーナル2007 10第54巻10号p.58.
http://www2.osipp.osaka-.ac.jp/~nomura/profile/ronbun/jca2007.10.pdf.
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