2012年2月23日木曜日

柏木・茅野報告と司法制度再改革


高等研交渉学研究会では、17日に柏木昇教授が「交渉論における信頼」、18日には茅野みつるさんが「理論か実務か 米国LSのカリキュラムにおける交渉実務の重要性」を報告された。その後、訴訟中心の法律家養成制度と論文中心の教員採用が問題だと改革を語り合った。2012223日 https://twitter.com/#!/nomurakn/status/172666798255255554

知識詰め込み型の法学教育と顧客の利益につながらない形式的な大学評価制度がこのまま続けば、大学教員も含めた日本の法律家のレベルは韓国や中国に「追い越されてしまう」。裁判官法学をコアにした法科大学院教育も再改革する必要がある。次の柏木意見に賛成だ。

「現在は『訴訟弁護士』養成中心。ビジネスでは訟手前のリーガルサービスができる人材や、海外案件を英語で対応できる人材も必要。」February 2012 WEDGE 28頁以下,30頁。

2012年2月8日水曜日

鞆の浦問題に関する推進・反対双方の共通認識と解決の創造


28日朝日新聞MyTown広島は、鞆の浦埋め立て架橋計画の推進反対両派が対話した住民協議会の仲介者2人が広島県知事に協議結果のまとめを提出したと報じた。仲介役の大澤・牛島弁護士が示された推進反対両派の共通認識の内容は、立場ではなく利害に焦点を合わせる交渉理論に合致している。

「2.立場ではなく利害に焦点を合わせる
○利害を探る。
○最低線を出すやり方を避ける。

3.双方にとって有利な選択肢(オプション)を考え出す
○まず複数の選択肢をつくり、決定はその後にする。
○ブレーンストーミングを活用する。」[1]

大澤先生はつぎのような前向きの期待を語られている。「今後の湯崎知事の最終判断について大沢弁護士は、「住民の共通認識を踏まえて判断すれば、(鞆地区の)将来に向けた、できるだけ禍根の少ない解決策の出発点になると思う」と期待を示した。

双方にとって満足できる選択肢を組み合わせて、創造的な解決が実現すれば、交渉やミーディエーション(仲介、調停)実践の画期的なケースになる。

20120208日朝日新聞MyTown広島(部分)
「鞆(とも)の浦(福山市)の埋め立て・架橋計画をめぐり、推進、反対両派が対話した住民協議会の仲介者2人が7日、県庁を訪れ、協議結果をまとめた報告書を湯崎英彦知事に提出した。2人は協議会の設置後初めて会見し、「非常に難しい問題について、立場の違いを乗り越えて住民に熱心に話し合ってもらった」と1年8カ月の協議を振り返った。
 仲介者を務めたのは牛島信(第二東京弁護士会)、大沢恒夫(静岡県弁護士会)の両弁護士。一昨年5月に湯崎知事の発案で始まり、今年1月まで計19回に及んだ協議会に出席。推進、反対両派各6人の住民同士の対話を促し、鞆地区の狭い県道の交通混雑や地域活性化など地元の課題に対する両派の共通認識を探り出す作業を担った。
 報告書に盛り込まれた両派の共通認識は、歴史的な町並みの中に大きな道路は造らない▽道幅の狭い鞆地区の県道を迂回(う・かい)するバイパスの有用性の理解が進んだ▽景観は大切で、配慮も必要▽駐車場や下水道、港湾施設の整備が必要――など8項目に上った。[2]
■仲介者が報告した推進、反対両派の共通認識(要旨)■
「(1)困っている人が現にいることを互いに認め、尊重し合う
(2)町中に大きな道を造らない
(3)バイパスの有用性への理解が一定程度進み、求められる機能は通過交通の排除、歩車分離、定時性の確保、時間短縮、大型車の通行、ネットワーク化
(4)景観は大切で、配慮も必要
(5)時間短縮も重要だが、バイパスには安全性や定時性の確保をより求める
(6)バイパスでの大型車の通行によって生活環境が悪化するなどの懸念を感じる人がいる
(7)駐車場の確保、下水道整備、港湾機能の確保、防災対策が必要
(8)鞆の歴史・伝統に誇りを持ち、景観を愛し、鞆を再生、活性化させたい」


[2] 吉田博行、水田道雄署名付記事の一部。