2016年12月23日金曜日

抄訳なのに全訳だと誤解させる記事-貿易自由化には調整コストを伴うのに




ダグラス・リポルド「欧米で保護主義台頭」中の「内向きのポピュリズム政策」の原語を調べたら"inward-looking populist policies"だった。それで日経161223の記事は貿易自由化に伴う弊害への対策などの重要ポイントを省略した抄訳だということがわかった。
16:35 - 20161223

ダグラス・リポルド氏は元の記事で、貿易自由化は経済的なボトルネックを取り除く政策と変化に伴う調整のための政策を伴わないとダメだと主張して、国によってはインフラに投資して内需を刺激する政策も必要となるという[1]
To be fully effective, liberalization efforts need to be accompanied by policies to address economic bottlenecks and support adjustment. There is room in some countries for stimulus policies to support domestic demand through investment spending, notably on infrastructure.

そして貿易自由化に伴い失業などが生じる「調整コスト」をどう負担するかの対策が必要だというのである。たとえば専門的技能の訓練と生涯学習によって、労働者をより開かれたダイナミックな経済に適応できるようすべきと提案する[2]
In addition, support for labor market measures may be needed to address adjustment costs related to worker dislocation and to prepare the work force for a more open and dynamic economy, for example via training in specific skills and life-long learning. Such actions can be directly supportive of Asian economic objectives.

訓練や勉強が嫌な労働者や調整コスト負担のための政策に自信がない政治家は、「内向きのポピュリズム政策」を支持して易きに流れるのではないだろうか。



[1] Douglas Lippoldt “Asia should take the opportunity to lead on trade”, Nikkei Asian Review, http://s.nikkei.com/2hgc8Ol.
[2] Id. at http://s.nikkei.com/2hgc8Ol.

2016年7月17日日曜日

マイ・フェア・レディはコックニー訛りから?


ミュージカル映画「マイ・フェア・レディ」の由来が「Mayfair Lady(メイフェア地域に住むような上流女性)」のコックニー訛り([ei][ai]になる)という説の紹介。My Fair Lady (1964) Trivia - http://www.imdb.com/title/tt0058385/trivia?item=tr2212735 …
https://twitter.com/nomurakn/status/754658254328770560

下の記事では、"I've Grown Accustomed To Her Face"「忘れられない彼女の顔」という歌詞の由来と「マイ・フェア・レディ」が「ロンドン橋落ちる」の歌から来たという説も紹介されている。

The suggestion that Nancy Olsen inspired Alan Jay Lerner to come up with "I've Grown Accustomed To Her Face" is unlikely, given that George Bernard Shaw's Higgins uses precisely that line when speaking of Eliza at precisely the same point, in the original 'Pygmalion' of 1912 - and indeed many of Shaw's lines make it into the musical's script. Regarding the assertion that 'My Fair Lady' is derived from the children's nursery rhyme, 'London Bridge Is Falling Down', a story circulated years ago suggested it was, in fact, a clever in-joke: Higgins proposes to make Eliza into a "Mayfair lady" (no, he doesn't say this in the script, more's the pity), but Eliza's cockney accent would contort that to sound like "Myfair Lydy". The story further claimed that Higgins DID say as much in an early draft of the play's script, to which Eliza retorted, "I down wanna be no Myfair lydy!". For some reason the line was dropped, but the title stayed. Or so the rumour goes...

http://www.imdb.com/title/tt0058385/trivia?ref_=tt_trv_trv

2016年7月5日火曜日

2016年度グローバルリーダーシッププログラム共通テキスト


今回紹介するのは、大阪大学のグローバルリーダーシッププログラムの授業でも用いている共通テキストの一部である。1学期の実践グローバルリーダーシップの授業は今週で最終回となるが、以下はこの授業のために5月に修正したヴァージョンである(修正前のものは2013年版である。http://nomurakn.blogspot.jp/2014/01/glp2013.html)。

今回の注目点は、リーダーシップのポイント(スライド4)「リーダーがフォロアーとの間で相互に影響を与え合いながら共通の目的のために働く」が、前回2016年6月15日水曜日「問題の定義と変革コスト」の「変革型リーダーの仕事(スライド5)」と同じパターンをしている点である。

2つのスライドの比較から、リーダーシップは問題解決の一部であること、そして現状から変革(イノベーション)に至るプロセスであることがわかる。














2016年6月15日水曜日

問題の定義と変革コスト


問題とは現状(実際の姿)と目標(あるべき姿)との差異と定義される。定義を知っていると、色々なことがわかる。現状と目標の差異が大きいと、あるべき姿に変化するためにイノベーションや適応が必要となる。しかし変化は人々に負担を強いる。新環境にどう適応させるかはリーダーシップの課題だ。


下のスライド5は、危機管理(現状が危ない状態)と生活改善(現状はまあまあ)では現状と目標をどう見るか(認知)が異なることを示している。たとえば災害による被害は危機管理の例に近く、現状がマイナスだから、災害前の状態(ゼロ)に戻る復興だけでも大きなコストがかかる。生活改善でも危機管理でも、現状に比べた目標の高さが高いほど、変化に必要なコストは高くなり、目標達成は難しくなることがわかる。

もっとも、現状を認知できない場合には、問題の存在もわからないので、現状が維持されることになる(スライド2「杞憂は杞憂か」、スライド4「見ない・聞かない・気づかない」参照)。もちろん、目標を明確にイメージできなければ、現状よりもましな状態にすら変化することもできない。

現状を訴え、目標を明確に示した例としてわかりやすいのが、マーチンルーサーキングのI have a dreamスピーチ[1]である。いつくかの夢が繰り返し語られるが、「わたしの4人の子供たちが肌の色ではなく人間としての中身で判断されるような国に住めるようになることを」というのは夢としても大義名分としても訴える力が強い。












[1] 音声付きは、http://www.americanrhetoric.com/speeches/mlkihaveadream.htm.政府のアーカイブ版は、https://www.archives.gov/press/exhibits/dream-speech.pdf.








2016年6月14日火曜日

Stout of heart-from Young Sherlock Holmes


ヤング・シャーロック(Young Sherlock Holmes)がワトソンに、君は勇敢だろとたきつけるときに”start at heart”と聞こえたので調べたら“stout of heart”だった。勇敢で揺るがない stoutheartedともいう。引用はブログで。
https://twitter.com/nomurakn/status/742388723443073024

学生のワトソンがカンニングのかどで放校になった若きシャーロックに、2人で事件の調査をしようとそそのかされて、ワトソンが「医者になる夢を諦めるのは嫌だ」というシーンである。

John Watson: I can't afford to jeopardize my medical career!
Sherlock Holmes: Weasel.
John Watson: I'm not a weasel. I am... practical.
Sherlock Holmes: Weasels *are* practical. And I imagined you courageous and stout of heart.
John Watson: I am courageous. And I'm stout of heart. It's just that... oh, all right. I'll do it.

Young Sherlock Holmes (1985)

Stouthearted: brave and determined
http://www.merriam-webster.com/dictionary/stouthearted