2012年3月18日日曜日

欧州大学院60年-アジア大学院?も必要


ベルギーの欧州大学院、設立60年でEU首脳級を輩出しているらしい(日経120318)。中国から3人在籍しているが日本人はいない。大戦の戦禍を繰り返さないという設立の決意はアジアでも共有すべきだ。FTATPP締結や留学生を増したりするだけではなく、共通の人材養成の場が必要だ。

せっかくのよい記事なのに、Web版日経無料版には共有するシステムがないのかな。日本語の障壁さえなければ、こんなに閉じていると欧米のマスメディアに淘汰されてしまうだろう。

「欧州大学院大学(カレッジ・オブ・ヨーロッパ)が欧州連合(EU)加盟国の首脳級を相次ぎ輩出している。50カ国超の国から集まった学生が10カ月間、勉学や生活を共にする。卒業生の多くは政治家、EU官僚、弁護士として活躍する。異なる国同士の相互理解を深め欧州の平和の礎をつくる――。そんな理念を掲げて設立から60年余り。欧州のエリート養成校は収穫期を迎えつつある。」

「学生らはEU加盟27カ国の出身だけではない。出身国は計56カ国。日本人はいないが、中国からは3人が在籍している。トルコ財務省を休職して門をたたいたアラゴン・ウントマーツさん(32)は「トルコは欧州の一部。ここで学んだことは母国に帰っても必ず役立つ」。」

「大学は49年に「大戦の惨禍を繰り返さない」という決意の下でチャーチル英首相、デガスペリ伊首相らの指導で設立された。いまや卒業生は1万人超。大学で育まれる欧州人としての連帯の精神や人脈は危機を乗り越える一助になるだろう。」

欧州エリート養成、収穫期
欧州大学院大設立60年、EU首脳級輩出
2012/3/18付日本経済新聞 朝刊

2012年3月14日水曜日

負けないあきらめない庶民の力

西川さんのリーダーシップの特長は、負けない、あきらめないというものだった。これは311日の大災害に際する庶民の力でもある。オバマ大統領はfortitudeとかresilience and determinationと讃えているが、日本の政府にも庶民の力が生かされればよいのに。2012314


The White House
Office of the Press Secretary
For Immediate Release
March 09, 2012
Statement by the President on the One Year Anniversary of 3/11 in Japan
As we mark one year since the catastrophic earthquake, tsunami, and nuclear disasters in Japan, Michelle and I join all Americans in honoring the memory of the 19,000 victims lost or missing.  We continue to be inspired by the Japanese people, who faced unimaginable loss with extraordinary fortitude.  Their resilience and determination to rebuild stronger than before is an example for us all.
…………………
http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2012/03/09/statement-president-one-year-anniversary-311-japan

2012年3月4日日曜日

三年寝たろう


NHKRADIO JAPANで三年寝たろうがおもしろかったという投書が紹介されていた。理由を知りたい。目覚めてから村に貢献したのは日本昔ばなしと同じだ。後者には実は怠け者ではなかったという解釈が多いが合理化し過ぎかも。いつかどこかで誰かの役にたっていれば「これでよいのだ」。201234

NHKワールド ラジオは海外向けに制作・放送されているが、Friends around the world(by Kay Fujimoto Mick Corliss)は日本国内でも聴ける(日曜 14:10-14:30)。三年寝たろうは番組中のつぎの企画で紹介されていた。

Once Upon a Time in Japan : Sleepyhead Taro, The man who Slept for Three Years

英語版では、目覚めて灌漑に成功したあと、” Taro worked hard, too, and lived happily ever after together with everyone else.”と改心してしまっている。残念。1975218(昭和500218)に放送されていた日本昔ばなしでは寝たろうはまた寝てしまうのだが、こちらの方が人間らしい。でも最後に説教じみた解釈が示されている。

「寝太郎はただ寝ていたのでなく、どうすれば村が助かるかをずっと考えていたのだった。
まんが日本昔ばなし データベース

日本昔ばなしの作画と演出は樋口雅一となっているが、出典は「表記なし」。1967年に次の絵本が出ているから、これが原作かもしれない。

大川 悦生、 渡辺 三郎『三ねんねたろう  むかしむかし絵本』
おおかわ えっせいぶん  わたなべ さぶろうえ 
出版:ポプラ社1967.6
サイズ    ISBN     4-591-00381-7   
27cm / 1冊

2012年2月23日木曜日

柏木・茅野報告と司法制度再改革


高等研交渉学研究会では、17日に柏木昇教授が「交渉論における信頼」、18日には茅野みつるさんが「理論か実務か 米国LSのカリキュラムにおける交渉実務の重要性」を報告された。その後、訴訟中心の法律家養成制度と論文中心の教員採用が問題だと改革を語り合った。2012223日 https://twitter.com/#!/nomurakn/status/172666798255255554

知識詰め込み型の法学教育と顧客の利益につながらない形式的な大学評価制度がこのまま続けば、大学教員も含めた日本の法律家のレベルは韓国や中国に「追い越されてしまう」。裁判官法学をコアにした法科大学院教育も再改革する必要がある。次の柏木意見に賛成だ。

「現在は『訴訟弁護士』養成中心。ビジネスでは訟手前のリーガルサービスができる人材や、海外案件を英語で対応できる人材も必要。」February 2012 WEDGE 28頁以下,30頁。

2012年2月8日水曜日

鞆の浦問題に関する推進・反対双方の共通認識と解決の創造


28日朝日新聞MyTown広島は、鞆の浦埋め立て架橋計画の推進反対両派が対話した住民協議会の仲介者2人が広島県知事に協議結果のまとめを提出したと報じた。仲介役の大澤・牛島弁護士が示された推進反対両派の共通認識の内容は、立場ではなく利害に焦点を合わせる交渉理論に合致している。

「2.立場ではなく利害に焦点を合わせる
○利害を探る。
○最低線を出すやり方を避ける。

3.双方にとって有利な選択肢(オプション)を考え出す
○まず複数の選択肢をつくり、決定はその後にする。
○ブレーンストーミングを活用する。」[1]

大澤先生はつぎのような前向きの期待を語られている。「今後の湯崎知事の最終判断について大沢弁護士は、「住民の共通認識を踏まえて判断すれば、(鞆地区の)将来に向けた、できるだけ禍根の少ない解決策の出発点になると思う」と期待を示した。

双方にとって満足できる選択肢を組み合わせて、創造的な解決が実現すれば、交渉やミーディエーション(仲介、調停)実践の画期的なケースになる。

20120208日朝日新聞MyTown広島(部分)
「鞆(とも)の浦(福山市)の埋め立て・架橋計画をめぐり、推進、反対両派が対話した住民協議会の仲介者2人が7日、県庁を訪れ、協議結果をまとめた報告書を湯崎英彦知事に提出した。2人は協議会の設置後初めて会見し、「非常に難しい問題について、立場の違いを乗り越えて住民に熱心に話し合ってもらった」と1年8カ月の協議を振り返った。
 仲介者を務めたのは牛島信(第二東京弁護士会)、大沢恒夫(静岡県弁護士会)の両弁護士。一昨年5月に湯崎知事の発案で始まり、今年1月まで計19回に及んだ協議会に出席。推進、反対両派各6人の住民同士の対話を促し、鞆地区の狭い県道の交通混雑や地域活性化など地元の課題に対する両派の共通認識を探り出す作業を担った。
 報告書に盛り込まれた両派の共通認識は、歴史的な町並みの中に大きな道路は造らない▽道幅の狭い鞆地区の県道を迂回(う・かい)するバイパスの有用性の理解が進んだ▽景観は大切で、配慮も必要▽駐車場や下水道、港湾施設の整備が必要――など8項目に上った。[2]
■仲介者が報告した推進、反対両派の共通認識(要旨)■
「(1)困っている人が現にいることを互いに認め、尊重し合う
(2)町中に大きな道を造らない
(3)バイパスの有用性への理解が一定程度進み、求められる機能は通過交通の排除、歩車分離、定時性の確保、時間短縮、大型車の通行、ネットワーク化
(4)景観は大切で、配慮も必要
(5)時間短縮も重要だが、バイパスには安全性や定時性の確保をより求める
(6)バイパスでの大型車の通行によって生活環境が悪化するなどの懸念を感じる人がいる
(7)駐車場の確保、下水道整備、港湾機能の確保、防災対策が必要
(8)鞆の歴史・伝統に誇りを持ち、景観を愛し、鞆を再生、活性化させたい」


[2] 吉田博行、水田道雄署名付記事の一部。

2012年1月30日月曜日

英語でビジネス会議と交渉を学ぶ授業―最近の学生は×××


2回生向けの英語で会議と交渉を学ぶセミナーが21日に終了。最終試験は、英国企業と日本企業との業務提携交渉に関するビデオドラマのワンシーン7分くらいをグループで上演したものを評価した。セリフを覚えて演じきった学生がかなりいたことと1学期で全員が見違えるように進歩したことに驚いた。
2012130

実はツイッターで書いた以上に学生の達成度に驚いた。正直若い頃は「最近の学生は」と愚痴ったこともあったが、最近は違う。今の学生は、われわれが学生のころと比べると「本当によーやるわ」。

台本の一部を紹介しよう。

Yasukawa  We have a proposal to make here, Mr. Parker. In return for exclusive licences, we would be willing to buy the magnets for world markets, direct from you, for a period of three years.

Hamilton  We appreciate your gesture, Mr. Yasukawa. At this stage, however, we do not see this as a viable option.

Parker  Let me add this. If we did license our products, Mr. Yasukawa, we would have to sell to the highest bidder.

Yasukawa    May I get this clear? Do you mean Hyperscan?

Parker   As I said, Mr. Yasukawa, it would be our very last option.

Yasukawa  Gentlemen and Mrs. Highsmith, we think that we have gone as far as we can go at this stage. Clearly, there's still a problem of-how do you say?-expectations here. If we can't agree about Europe, how can we talk about the world?



ベストパーフォーマーとベストロール賞の受賞者による上演
背景は実際のビデオドラマのシーン




最後に、ティーチングアシスタントのKHさんの記録をもとにNOMKNが作成した当日の進行。

121日土曜日
最終講義の場所は講義シアター。劇場とは変な名前と思うかもしれないが、講義はすべからく劇のようにあらねばならないという第2Deanの方針で命名された。今回の上映にふさわしいシアターであった。

(1)スケジュール
1.10:30-11:30   英語の耳と口の練習 & Unit5の内容と発音等の確認
            昼休み(1時間30分)
 2.13:00-14:10   パフォーマンス&フィードバック(チームDB
            休憩(10分)
 3.14:20-15:30   パフォーマンス&フィードバック(チームCA
            休憩(10分)
 4.15:40-16:10   まとめ

(2)パフォーマンスの順番
AからDグループ(名前)
 1.DOOSN
 2.BANOH
 3.CIKTY
 4.AKNHH

(3)特記事項
 1.配役等はチーム内で事前に決めておいた
 2.優秀なパフォーマンスをした者に各種賞を授与した
Best Performer (as Hamilton)Kさん(Aチーム)
2nd Best HamiltonIさん(Cチーム)
Best ParkerHさん(Bチーム)
Best YasukawaSさん(Dチーム)
Best HighsmithOさん(Dチーム)

 3.講義シアターの他に3部屋確保、昼休みの練習で使用
 4.全員に評価シート(添付ファイル参照)を配布、全員が全員の評価をした。
 5.ビデオ撮影→各チームの演技の撮影は失敗。ベストパーフォーマーとベストロール賞受賞者のみのベストチームによる上映のみ撮影できた。


THE END

2012年1月27日金曜日

説明上手と下手の違い


わかりやすく説明できる人とそうでない人の違いを最近発見した。説明下手な人はわからないことを人のせいにする。わかるはずだと思う。だから治らない。説明上手は自分が至らないからだと思う。学者でも大学院生でも秘書でも、いつも気をつけて相手の立場で説明しているから上達するのである。

仏教学者の中村元(19121999)先生のつぎの言葉は、わかりにくい論文や教科書を書く法学者になるほどと思わせるものだ。なにしろ、漢訳仏典ではわけがわからんというので多数(ご本人は「とびとびに撫でただけ」といわれる)の仏典をサンスクリット[1]原文から訳し直された方なのである。説得力がある。
「一般に、わかりやすく説くのが通俗的で、わけのわからないようなしかたで説くのが学術的であるかのように思われているが、これはまちがいで、わかりやすく説くのが学術的で、あいまいなままにしておくのは非学術的であろう。」[2]
 もっとも、いつか紹介した『ブッダのことば スッタニパータ』[3]はパーリ語聖典から翻訳されたそうだ。そこではなぜ漢訳語ではだめなのかの理由がつぎのように述べられている。
「もともとインドでは耳で聞いて口づてに伝承されていたものであるから、この性格をやはり保持したいと思った。耳で聞いても解らぬような漢訳語を使うことは、およそ原典の精神から逸脱している」[4]
法学者の想像を超えた学識で、参りましたです。

『ブッダのことば スッタニパータ』では、中村先生はブッダの「その生き生きとしたすがたに最も近く迫りうる書」(433頁)「歴史的人物としてのゴーダマ・ブッダに最も近いものであり、文献としてはこれ以上遡ることができない」(438頁)と説明されている。この記述からは、先生の「これは伝えねば」という意気込みと使命感が感じられるのではないだろうか。
日本の学者の論説や翻訳がわかりにくいのは、本当の語学力がないことに加えて、「伝えたいという思いが弱いから伝わらない」からだと書いたが[5]、日本にも中村先生のような本物の学者がいたのである。




[1] サンスクリットだけではないことは、後述。
[2] 中村元著 シリーズ「現代語訳 大乗仏典」全7巻の各巻についている「はしがき」より。
[3] 201183日水曜日http://nomurakn.blogspot.com/2011/08/blog-post.html.ワイド版岩波文庫、1991年。
[4] 前掲注(3)440頁。
[5] 2011611日土曜日「伝えたいという思いが弱いから伝わらない」http://nomurakn.blogspot.com/2011/06/blog-post.html.2010521日金曜日「弁護士と法学者の対話」http://nomurakn.blogspot.com/2010/05/blog-post_21.html.