2012年3月4日日曜日

三年寝たろう


NHKRADIO JAPANで三年寝たろうがおもしろかったという投書が紹介されていた。理由を知りたい。目覚めてから村に貢献したのは日本昔ばなしと同じだ。後者には実は怠け者ではなかったという解釈が多いが合理化し過ぎかも。いつかどこかで誰かの役にたっていれば「これでよいのだ」。201234

NHKワールド ラジオは海外向けに制作・放送されているが、Friends around the world(by Kay Fujimoto Mick Corliss)は日本国内でも聴ける(日曜 14:10-14:30)。三年寝たろうは番組中のつぎの企画で紹介されていた。

Once Upon a Time in Japan : Sleepyhead Taro, The man who Slept for Three Years

英語版では、目覚めて灌漑に成功したあと、” Taro worked hard, too, and lived happily ever after together with everyone else.”と改心してしまっている。残念。1975218(昭和500218)に放送されていた日本昔ばなしでは寝たろうはまた寝てしまうのだが、こちらの方が人間らしい。でも最後に説教じみた解釈が示されている。

「寝太郎はただ寝ていたのでなく、どうすれば村が助かるかをずっと考えていたのだった。
まんが日本昔ばなし データベース

日本昔ばなしの作画と演出は樋口雅一となっているが、出典は「表記なし」。1967年に次の絵本が出ているから、これが原作かもしれない。

大川 悦生、 渡辺 三郎『三ねんねたろう  むかしむかし絵本』
おおかわ えっせいぶん  わたなべ さぶろうえ 
出版:ポプラ社1967.6
サイズ    ISBN     4-591-00381-7   
27cm / 1冊

2012年2月23日木曜日

柏木・茅野報告と司法制度再改革


高等研交渉学研究会では、17日に柏木昇教授が「交渉論における信頼」、18日には茅野みつるさんが「理論か実務か 米国LSのカリキュラムにおける交渉実務の重要性」を報告された。その後、訴訟中心の法律家養成制度と論文中心の教員採用が問題だと改革を語り合った。2012223日 https://twitter.com/#!/nomurakn/status/172666798255255554

知識詰め込み型の法学教育と顧客の利益につながらない形式的な大学評価制度がこのまま続けば、大学教員も含めた日本の法律家のレベルは韓国や中国に「追い越されてしまう」。裁判官法学をコアにした法科大学院教育も再改革する必要がある。次の柏木意見に賛成だ。

「現在は『訴訟弁護士』養成中心。ビジネスでは訟手前のリーガルサービスができる人材や、海外案件を英語で対応できる人材も必要。」February 2012 WEDGE 28頁以下,30頁。

2012年2月8日水曜日

鞆の浦問題に関する推進・反対双方の共通認識と解決の創造


28日朝日新聞MyTown広島は、鞆の浦埋め立て架橋計画の推進反対両派が対話した住民協議会の仲介者2人が広島県知事に協議結果のまとめを提出したと報じた。仲介役の大澤・牛島弁護士が示された推進反対両派の共通認識の内容は、立場ではなく利害に焦点を合わせる交渉理論に合致している。

「2.立場ではなく利害に焦点を合わせる
○利害を探る。
○最低線を出すやり方を避ける。

3.双方にとって有利な選択肢(オプション)を考え出す
○まず複数の選択肢をつくり、決定はその後にする。
○ブレーンストーミングを活用する。」[1]

大澤先生はつぎのような前向きの期待を語られている。「今後の湯崎知事の最終判断について大沢弁護士は、「住民の共通認識を踏まえて判断すれば、(鞆地区の)将来に向けた、できるだけ禍根の少ない解決策の出発点になると思う」と期待を示した。

双方にとって満足できる選択肢を組み合わせて、創造的な解決が実現すれば、交渉やミーディエーション(仲介、調停)実践の画期的なケースになる。

20120208日朝日新聞MyTown広島(部分)
「鞆(とも)の浦(福山市)の埋め立て・架橋計画をめぐり、推進、反対両派が対話した住民協議会の仲介者2人が7日、県庁を訪れ、協議結果をまとめた報告書を湯崎英彦知事に提出した。2人は協議会の設置後初めて会見し、「非常に難しい問題について、立場の違いを乗り越えて住民に熱心に話し合ってもらった」と1年8カ月の協議を振り返った。
 仲介者を務めたのは牛島信(第二東京弁護士会)、大沢恒夫(静岡県弁護士会)の両弁護士。一昨年5月に湯崎知事の発案で始まり、今年1月まで計19回に及んだ協議会に出席。推進、反対両派各6人の住民同士の対話を促し、鞆地区の狭い県道の交通混雑や地域活性化など地元の課題に対する両派の共通認識を探り出す作業を担った。
 報告書に盛り込まれた両派の共通認識は、歴史的な町並みの中に大きな道路は造らない▽道幅の狭い鞆地区の県道を迂回(う・かい)するバイパスの有用性の理解が進んだ▽景観は大切で、配慮も必要▽駐車場や下水道、港湾施設の整備が必要――など8項目に上った。[2]
■仲介者が報告した推進、反対両派の共通認識(要旨)■
「(1)困っている人が現にいることを互いに認め、尊重し合う
(2)町中に大きな道を造らない
(3)バイパスの有用性への理解が一定程度進み、求められる機能は通過交通の排除、歩車分離、定時性の確保、時間短縮、大型車の通行、ネットワーク化
(4)景観は大切で、配慮も必要
(5)時間短縮も重要だが、バイパスには安全性や定時性の確保をより求める
(6)バイパスでの大型車の通行によって生活環境が悪化するなどの懸念を感じる人がいる
(7)駐車場の確保、下水道整備、港湾機能の確保、防災対策が必要
(8)鞆の歴史・伝統に誇りを持ち、景観を愛し、鞆を再生、活性化させたい」


[2] 吉田博行、水田道雄署名付記事の一部。

2012年1月30日月曜日

英語でビジネス会議と交渉を学ぶ授業―最近の学生は×××


2回生向けの英語で会議と交渉を学ぶセミナーが21日に終了。最終試験は、英国企業と日本企業との業務提携交渉に関するビデオドラマのワンシーン7分くらいをグループで上演したものを評価した。セリフを覚えて演じきった学生がかなりいたことと1学期で全員が見違えるように進歩したことに驚いた。
2012130

実はツイッターで書いた以上に学生の達成度に驚いた。正直若い頃は「最近の学生は」と愚痴ったこともあったが、最近は違う。今の学生は、われわれが学生のころと比べると「本当によーやるわ」。

台本の一部を紹介しよう。

Yasukawa  We have a proposal to make here, Mr. Parker. In return for exclusive licences, we would be willing to buy the magnets for world markets, direct from you, for a period of three years.

Hamilton  We appreciate your gesture, Mr. Yasukawa. At this stage, however, we do not see this as a viable option.

Parker  Let me add this. If we did license our products, Mr. Yasukawa, we would have to sell to the highest bidder.

Yasukawa    May I get this clear? Do you mean Hyperscan?

Parker   As I said, Mr. Yasukawa, it would be our very last option.

Yasukawa  Gentlemen and Mrs. Highsmith, we think that we have gone as far as we can go at this stage. Clearly, there's still a problem of-how do you say?-expectations here. If we can't agree about Europe, how can we talk about the world?



ベストパーフォーマーとベストロール賞の受賞者による上演
背景は実際のビデオドラマのシーン




最後に、ティーチングアシスタントのKHさんの記録をもとにNOMKNが作成した当日の進行。

121日土曜日
最終講義の場所は講義シアター。劇場とは変な名前と思うかもしれないが、講義はすべからく劇のようにあらねばならないという第2Deanの方針で命名された。今回の上映にふさわしいシアターであった。

(1)スケジュール
1.10:30-11:30   英語の耳と口の練習 & Unit5の内容と発音等の確認
            昼休み(1時間30分)
 2.13:00-14:10   パフォーマンス&フィードバック(チームDB
            休憩(10分)
 3.14:20-15:30   パフォーマンス&フィードバック(チームCA
            休憩(10分)
 4.15:40-16:10   まとめ

(2)パフォーマンスの順番
AからDグループ(名前)
 1.DOOSN
 2.BANOH
 3.CIKTY
 4.AKNHH

(3)特記事項
 1.配役等はチーム内で事前に決めておいた
 2.優秀なパフォーマンスをした者に各種賞を授与した
Best Performer (as Hamilton)Kさん(Aチーム)
2nd Best HamiltonIさん(Cチーム)
Best ParkerHさん(Bチーム)
Best YasukawaSさん(Dチーム)
Best HighsmithOさん(Dチーム)

 3.講義シアターの他に3部屋確保、昼休みの練習で使用
 4.全員に評価シート(添付ファイル参照)を配布、全員が全員の評価をした。
 5.ビデオ撮影→各チームの演技の撮影は失敗。ベストパーフォーマーとベストロール賞受賞者のみのベストチームによる上映のみ撮影できた。


THE END

2012年1月27日金曜日

説明上手と下手の違い


わかりやすく説明できる人とそうでない人の違いを最近発見した。説明下手な人はわからないことを人のせいにする。わかるはずだと思う。だから治らない。説明上手は自分が至らないからだと思う。学者でも大学院生でも秘書でも、いつも気をつけて相手の立場で説明しているから上達するのである。

仏教学者の中村元(19121999)先生のつぎの言葉は、わかりにくい論文や教科書を書く法学者になるほどと思わせるものだ。なにしろ、漢訳仏典ではわけがわからんというので多数(ご本人は「とびとびに撫でただけ」といわれる)の仏典をサンスクリット[1]原文から訳し直された方なのである。説得力がある。
「一般に、わかりやすく説くのが通俗的で、わけのわからないようなしかたで説くのが学術的であるかのように思われているが、これはまちがいで、わかりやすく説くのが学術的で、あいまいなままにしておくのは非学術的であろう。」[2]
 もっとも、いつか紹介した『ブッダのことば スッタニパータ』[3]はパーリ語聖典から翻訳されたそうだ。そこではなぜ漢訳語ではだめなのかの理由がつぎのように述べられている。
「もともとインドでは耳で聞いて口づてに伝承されていたものであるから、この性格をやはり保持したいと思った。耳で聞いても解らぬような漢訳語を使うことは、およそ原典の精神から逸脱している」[4]
法学者の想像を超えた学識で、参りましたです。

『ブッダのことば スッタニパータ』では、中村先生はブッダの「その生き生きとしたすがたに最も近く迫りうる書」(433頁)「歴史的人物としてのゴーダマ・ブッダに最も近いものであり、文献としてはこれ以上遡ることができない」(438頁)と説明されている。この記述からは、先生の「これは伝えねば」という意気込みと使命感が感じられるのではないだろうか。
日本の学者の論説や翻訳がわかりにくいのは、本当の語学力がないことに加えて、「伝えたいという思いが弱いから伝わらない」からだと書いたが[5]、日本にも中村先生のような本物の学者がいたのである。




[1] サンスクリットだけではないことは、後述。
[2] 中村元著 シリーズ「現代語訳 大乗仏典」全7巻の各巻についている「はしがき」より。
[3] 201183日水曜日http://nomurakn.blogspot.com/2011/08/blog-post.html.ワイド版岩波文庫、1991年。
[4] 前掲注(3)440頁。
[5] 2011611日土曜日「伝えたいという思いが弱いから伝わらない」http://nomurakn.blogspot.com/2011/06/blog-post.html.2010521日金曜日「弁護士と法学者の対話」http://nomurakn.blogspot.com/2010/05/blog-post_21.html.

2011年12月24日土曜日

グローバルリーダーシップとは何か

実践グローバルリーダーシップの最終講義で10月からの授業を振り返った。いつもいつか書こうと思って書けないでいることが多いので、大いに舌足らずだがパワーポイントのスライドを引用しておく。スライドのコメントは、話の概要と授業中に出た意見を加えたものである。




これまでの授業では、グローバル化とは何かやグローバル益とは何かについて、大いに議論をしてきた。しかし、教員が問いかける対話型授業(ソクラティックメソッド)も、問いかけばかりでは雲をつかむような話だと思われた受講生もいるかもしれない。そこで、今日はわたしの一応の見解を述べたあとで受講生の意見を聞き、今までの授業を振り返ることとしたい。






上のスライド2の1はグローバルリーダーシップを問題中心に定義したものだ。
スライド2の2の意味はファーストリテイリングの柳井社長が使われていたものと同じだと記憶している。

これらの2つの定義を足すと、グローバルリーダーシップとは、「国や地域を問わないで、人々に共通する問題を解決するリーダーシップ」といえる。

好例が、釈尊である。ブッダは人間が逃れられない苦しみからの解脱を解いて、たくさんの人々が彼について行った。そのリーダーシップは2000年の時を超えて現在の人々にも大きな影響力をもっている。ブッダの教えがきちんと伝わっているかは別問題だが。

しかし現在の地球では、四苦八苦のような人間にとって不可避と考えられた問題に加えて、人間の活動がすべての人に深刻な問題を引き起こしている。例2と例3がそれだ。





スライド3は、例2として欧州の債務危機を示す。深刻化する危機に向けて欧州が財政規律を強化する条約に合意したのだが、英国は国益や議会の権限が侵害されることを理由として、合意に参加しなかった。英国はもともと共通通貨ユーロ圏にも属していない。

国益を守るためにという理由で共同行為に合意しなかったり、さらに合意の実施に協力しない国が出てくれば、欧州の債務危機はもっと悪化するかもしれない。




スライド4のように、欧州の危機は域外の国の危機にもつながるのである。米国のリーマンショックが2008年以降の国際金融危機を引き起こし、国際的な大不況につながったのと同じである。国益を守るだけではグローバルな課題を解決することはできない。





スライド5は、地球温暖化(グローバルウォーミングだからまさにグローバルといえる)問題に関するものだ。

地球温暖化に取り組むための国連気候変動枠組条約の第17回締約国会議(COP 17)で何が起こったのか。2020年以降に京都議定書に変わる新たな枠組みを作ることには合意できたが、温暖化ガスについての京都議定書による法的な削減義務は2012年末で終了してしまう。

日本やカナダは京都議定書の延長に合意しなかったので、その後は法的な削減義務は負わず、自主的な取り組みをすることになる。米国ははじめから京都議定書に参加していないので、いまだに自主規制のままだ。島嶼諸国は「国が沈む」と主張しているが、まだ大丈夫だろうと思っている国が多いので、真剣な対策がとられないのである。







もしかすると、上のスライド6のように大都市が水没してしまうかもしれない。しかし、このような危機が来ることは科学的に証明されたわけではない。もし信頼できるデータによって世界の人々が地球温暖化がもたらす危機について共通の認識を持つことができれば、国益を超えたグローバルな対策が合意できるはずだ。それでスライド6のようにならないのなら、国益にもかなう。

欧州債務危機や地球温暖化の問題について、各国のリーダー達はグローバルなリーダーシップを発揮できないでいる。国内に基盤を有するリーダー達は、これらの問題が人類に共通の深刻な問題かどうかを国民に説得的に示すことができないので、グローバルな課題を訴えても「有権者」はついてきてくれないのである。








スライド7は、この授業のテーマである「人はなぜこの人について行くのか」の要素をまとめたものである。リーダーシップの要素をハードパワーとソフトパワーに分けることは議論の整理に役立つ。ハードパワーは、物質的な御利益で人を動かす力である。

社長等の権力者はこの力を持っているから、人がついて行くのである。しかし、ハードパワーが行き過ぎると、拳銃を突きつけて人を思い通りに動かすのと変わらなくなる。故キムジョンイルなどはどうだったか。脅かしや脅迫によって人についてこさせるのは、この授業で考えているリーダーシップではない。

この授業でたくさんのゲストスピーカーから感じ取って欲しかったのは、ソフトパワーの要素である。権力が無くても、アメも鞭もなくても、なにがあればこの人について行きたいと思わせるのだろうか。好きだから、信用できるから、尊敬できるからという要素が大切である。

もちろん、1つの課題を追求する情熱や勇気や実行力も重要である。尊敬や信用という要素は、情熱や勇気の結果として獲得されるのである。

しかし、すごいソフトパワーをもった芸術家や大学の教員がグローバルなリーダシップを発揮できるわけではない。授業ではいわなかったが、○○○金と力は無かりけりではダメなのだ。グローバルなリーダシップのためには、ハードパワーも必要だ。授業でも意見があった”give and take”の関係、利害の交換を示す力が重要だ。つまり、グローバルなリーダシップのためには、ハードパワーとしての利害に基づいた交渉力が必要なのである。

ハードパワーを行使できる立場にいる(権限がある)ことと、それを実際に行使できるかどうかとはまた別である。さらに、ソフトパワーがないとハードパワーを効果的に行使することはできない。反対に、権限がない市民でも、交渉力というハードパワーとソフトパワーがあれば[1]、グローバルな課題に挑むことも可能となるのである。


[1] ジョセフナイは、ハードパワーとソフトパワーをミックスした力を「スマートパワー」と呼ぶ。Joseph S. Nye ,The Powers to Lead (Oxford Univ Pr ,2008) at x, xiii, 83.








わたしが感銘を受けたスピーチは、エリックコロンさんのものだ。コロンさんが黒板に書かれた最初の絵は、青い地球だった。それはアポロ17号の乗組員が撮影した「ブルーマーブル」と呼ばれるようになったイメージに違いない[2]。この写真によって、人類の多くが地球を球体(グローブ)として真に認識したのである。


[2] The Blue Marble from Apollo 17, http://visibleearth.nasa.gov/.



エリックコロンさんがジャングルで出会い、助けられなかったという、飢えて死にかけている赤ん坊を抱いた母親。今の地球で起きている飢餓の問題は、自然災害というより人間の影響が大きい。われわれはグローバルなリーダシップを発揮できるのだろうか。

上のスライド8は、それより前のアポロ8号(月面着陸はいまだ成功しておらず、月の周回軌道にいた時代)によるもので、「地球の出」と呼ばれるシリーズの一枚だ。







では上の9枚目のスライドは何を映したものだろう。このブログでも認識できるのだが、地球がどこかに映っている。ボイジャー1号が太陽系の外、地球から40億マイルの距離から写した写真だ。

もはやグローブ(球体)でなく「点」としての地球。はるか未来にはグローバルリーダーシップでは狭すぎるという時代がやってくるかもしれない。ユニバーサルリーダーシップ(宇宙的または普遍的リーダーシップ)、それを講義しているのは人類ではないかもしれない。 




おしまい